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駐日カナダ大使
■スピーチ

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(訳文)

「金融危機下での新たな日加協調へ向けて」
ジョナサン・T・フリード 駐日カナダ大使


於:日本記者クラブ
2008年12月8日
東京


日本において長い歴史と重要な役割をお持ちの「日本記者クラブ」の皆様にお話しできますことを光栄に思います。また、駐日カナダ大使としての任務に就きましたことは、さらに大きな栄誉であると思っております。それは、歴史、文化、商業、料理などの面で大変豊かな国に住めるという恩恵のためではございません。もちろん、それも確かですが、それよりも私はこれまで20年以上もの間、カナダを代表する立場の職に就き、日本と関わり、訪問し、そして今回は駐日カナダ大使として日本に3ヶ月住み、両国が持つ豊かな資産について、また日加協力を深めるために私に与えられた又とない機会について、一段と理解を深めることができたためです。

そこで最初に、日加両国の資産の概観について簡潔に述べさせて頂き、次に昨今の世界的金融危機の課題と今後進むべき道について、私の見解を述べさせていただきたいと思います。

日加両国の資産と共通点は何でしょうか。両国は多くの共通の関心事と特徴を持っております。

つまり、高度な技術と豊かな資本を持つ日本の経済と、規模はより小さくても、資源だけでなく機動性と革新性にあふれるカナダの経済は良いパートナーシップを築くことができます。双方が協調するならば、両国は一層強く豊かで安定した国になるのです。

ですから、カナダと日本が、貿易と経済、政治と安全保障の堅固な協調関係からメリットを享受していると考えるのはごく自然なことです。実際に、両国の二国間関係は好調です。私達は昨今の金融経済危機の冷たい流れにぶつかっていますが、カナダも日本も他の多くの国よりは良い状況にあると思います。両国ともに世界的な実体経済の減速の影響を感じてはいますが、世界へ提供できるものをたくさん持っています。

この経済金融危機にあって、私達は多くの点で似たような状況にあります。過去数十年、両国政府は昨今見られるような様々な問題に対処できるよう、経済や金融部門を強化するための重要な措置を取りました。また、両国は、必要とされる対策についても、共通の考えを持っています。まず自分の国で規制や政策を正しく実施し、健全で慎重な規制をとることにより、それぞれの国の金融部門の迅速な回復と強化を図る必要があることを認識しています。

この考え方は、経済と金融の安定を促進するために、国際協力に改善の余地が多くあることを否定するものではありません。グローバルな経済発展については新興国も果たすべき重要な役割があり、共に参加する必要があります。しかし、グローバルな経済外交が、各国における適切な金融部門に対する規制や監督の実施という大きな任務に取って代わることができると考えるべきではありません。

現在の危機はカナダや日本から始まったものではありません。何が間違いであったかについて、その詳細は今後何年もかけて議論することになるとしても、その概略は既に十分に明らかです。

世界中で、リスクが過小評価され、実態に対比して安い値がつけられました。投資インセンティブは、不釣合いな為替相場が主因となったグローバルな不均衡により悪化してゆがめられ、不適切なリスクテイクを招いたのです。こうした動きは、米国や英国、その他の国々における住宅価格と、加えて株式といった資産価格の持続不可能な高騰を伴いました。

これらすべては国内規制や監督に隙間があったためにより引き起こされました。あまりにも多くのリスクがオフバランス、つまり簿外に置かれ、規制当局の視野の外にあったのです。

幸いなことに日加両国はそれぞれ多くの構造改革を行ってきており、それが現在の危機から身を守るために役立ちました。日本では、1990年代の不動産と株のバブル崩壊が明瞭な教訓を残しました。その結果、今回の危機が生じても、日本の銀行は高いレベルの資本を保持し、当局による適切な規制を受けていました。実体経済においても、1990年代の経験により企業は効率性を向上する動機を高め、また過度な負債保有を避けるようになりました。こうした対策により、企業は現在の不景気に耐える力を増すことができたのです。

カナダも、経済を一層堅固なものとするために大きな進展を遂げてきました。国内の税制、歳出、公的年金改革を行うことにより、長期的に持続可能な財政路線を敷いてきました。カナダは10年前に債務を解消し、それ以来、毎年黒字を計上してきました。その結果、政府は今回の景気の悪化に対処する措置を取ることができたのです。カナダ政府の純債務総額は、対GDP比で1995年のピーク時には71パーセント近くもありましたが、徐々に減少し、2007年には約23パーセントにまで下がりました。2006年以降、連邦政府の債務を370億カナダドル以上も削減致しました。また、労働市場と生産物市場の開放性と柔軟性を高めるために、困難ではあるものの重要な改革に取組み、生産性と競争力を引き上げてきました。

しかし、現在の金融危機はあまりにも範囲が広いため、その影響をうけない国は一つもありません。

昨年の夏、米国のサブプライム住宅ローンに端を発した金融危機が始まったとき、カナダと日本は比較的影響を受けませんでした。両国の金融機関はサブプライム住宅ローンや、それをベースとした複雑な金融商品をあまり取り扱っていなかったからです。

しかし、金融危機は欧米から世界へ、そして更には金融部門から実体経済へ広がってきました。カナダも日本も輸出が減速しており、現在、深刻な不景気に見舞われています。

投資家が先を争うように資金の安全な避難所を求めるようになるにつれ、為替市場と金融市場のボラティリティ(変動)は過度なものになりました。クレジットマーケットがまだ機能しているカナダや日本のような国においてさえ、ローン供与を受けることが難しくなっており、国内企業や個人に重圧がかかっています。個人消費や企業の景況感が急落してきたことも驚くに値しません。企業は投資を控え、消費者の購買意欲は下がっています。

率直に申し上げますと、どうしたらこの不景気を早急に回復できるかわかりません。グローバルな「レバレッジ解消」はまだ何ヶ月も続き、実体経済への本格的な影響が十分明白になるには、まだ時間がかかりそうです。私達はとても難しい景気環境が今後長く続くことに備える必要があります。

このように、カナダと日本では経済を強めるために多くの改革が行われてきましたが、さらに具体的措置が求められるようになってきました。そして、両国政府はそれぞれの状況に合った適切な方法で対処してきたと思います。

カナダ政府は現在の危機対策として、多くの措置を取ってきました。個人の所得税は今年度100億カナダドル以上削減されました。また、連邦事業税は2006年の22パーセントから今年19.5パーセントへ低下し、2012年には15パーセントへ更に下がります。この措置は超党派の支持を得ていることを付け加えたいと思います。経済が悪化する前に発表された措置には、GDPの1.4 パーセントに相当する210億カナダドルの追加的減税が含まれていました。

カナダ銀行は、日本銀行などの他の中央銀行と共に、市場に資金供給を行い、金融政策により適切な対応を取りました。また、クレジットマーケットの機能の継続を図るよう一段と強い権限を与えられました。

日本でも、政府は危機に対処するため、市場の安定を回復し、景気の早期回復の見通しを高めるための措置を取ってきました。以前の金融危機とは対照的に、政府は非常にオープンであり、金融庁、日本銀行は情報を共有し、施策の内容を明らかにしています。

現在の危機により、幾つかの国における近年の経済・規制のモデルの弱点が露呈されました。明らかに、改革が必要です。しかし、次の危機の下地を作ってしまわないように、慎重に考え抜いた改革でなくてはなりません。

最近の「フィナンシャル・タイムズ」に、カナダのジム・フレアティ財務大臣が述べた金融危機への適切な対応についてのカナダの見解が掲載されました。政府が先頭に立って法律、制度、規制の堅固な体制を確立しなければならないという事実を大臣は強調しました。それには以下のような4つの要素があります。

  1. 金融部門の規制はすべての関連機関を対象とする。

  2. 金融危機時の保護となる資本準備金および流動性準備は、深刻な不況にも耐えるほど多額なものとする。

  3. 規制当局はリスク評価に対して系統だった規制手法をとり、好景気のときにリスクを過小評価するインセンティブを与えないように図る必要がある。最近数年間の低いボラティリティは、リスクの恒久的な低下を示すものと多くの人に解釈された。日本でよく知られているように、地震の小さな揺れがきた後、さらに大きな揺れが起きるリスクは低くなるのではなく、実際には高くなる。

  4. 市場の透明性を高め、市場のインフラを強めることが重要になる。

従って、カナダと日本は好調な関係を保ちながら、現在の危機の冷たい現実に直面するグローバル経済に新しいエネルギーを注入するために協力しています。両国首脳は最近ワシントンで行われたG20サミットの前に電話で話し、会合では緊密な協力を示しました。両国は、景気回復に向けてグローバルな金融システムの安定した基盤を築くために、日加協力を前進させる方法を官僚レベルで探り続けています。

しかし、経済成長の機会を活かして両国が協力して行える事柄がまだたくさんあります。政府レベルでは、両国首脳が2005年に「日加経済枠組み」に署名し、それが経済問題に関する高官レベルの定期的な二国間協議の基礎となっています。実は、私はバンクーバーから戻ってきたばかりです。経済枠組みの下で作られた「合同経済委員会」に出席し、ルイ・レベック次期国際貿易次官と河野雅治外務審議官との間で行われた協議に参加してきたのです。

その協議は、新設された「日本・カナダ貿易投資対話」の11月開催第1回会合に続くものです。この対話は、両国間の貿易、規制協力、産業革新に向けた環境整備に関する問題を協議するフォーラムを提供するものです。

しかし、国民の生活水準を向上するために雇用を創出し、国家の富を増大するのは民間部門です。また、技術革新はそのような富を生み出す生産性を高めます。このようなわけで、日加両国は技術革新、科学、技術を優先しています。私の見解では、両国は技術革新の協調を高めることにより協力体制を強化し、多様化する必要があります。

カナダでは、日本は世界で最も技術革新が進んだ国であると認識されています。日本は先端材料、製造業、ロボット工学、デジタル技術、そしてハイブリッドエンジンや太陽電池などの画期的な環境技術で世界をリードしています。カナダは両国に恩恵をもたらす方法で日本の先進的な取組みに付加価値を与えることができると考えています。テクノロジーとイノベーション、ハードウェアとソフトウェア、資源と製造といった面で、両国は相互に補い合える強みを持っています。

カナダの燃料電池技術は、日本でテストされ、現在採用されています。先ほど申しましたように、カナダは日本にとって第一のウラン供給国として、55基の原子炉の多くを稼動させるのに必要なウランを輸出しています。カナダの巨大なオイルサンドに埋蔵されたカナダ産の石油は、安全性の問題や地政学的リスクを懸念せずに、日本のエネルギー需要を満たすために大きな役割を果たすことができるでしょう。炭素地中隔離技術(CCS)をはじめ、日本にとって「未来のエネルギー」であるガスハイドレートの事業における研究協力にも可能性があります。

エネルギーに関して、カナダの技術がいかに日本に恩恵をもたらすかについて、具体例を一つあげさせて頂きたいと思います。この秋、カナダ以外の国で最初のエネルギー収支ゼロの「スーパーEネットゼロエネルギーハウス」が札幌で公開されました。

この環境に優しい住宅は、責任ある管理の下で伐採された木材、高性能の断熱、特殊な窓、太陽光熱や地熱による発電、その他のテクノロジーを組み合わせたもので、使用するエネルギーよりもきれいなエネルギーを生み出す家を実現します。「ネットゼロ」という言葉はそういう意味です。この日加共同プロジェクトは、カナダで設計された木造建築物が省エネおよび環境保護の両方のニーズを満たすということを示しています。また、カナダの住宅は地震にも強いことがわかりました。カナダの3階建て木造建築物が地震のシミュレーションテストで神戸の地震より強い揺れに耐えることが判明したのです。

こうした機会を探るために、カナダは日本との二国間科学技術協力の再活性化を模索しております。重点を置いているのは、アイデアを大学や政府の研究所から市場へ移すことです。重要なグローバル課題について、両国の研究者や企業間の共同研究を育成したいと望んでおります。そうした課題の例としてあげられるのは、輸送手段の燃費効率を上げる新しい形態の持続可能なエネルギーや先進材料などの開発です。

私は駐日大使として、カナダ大使館のチームがこうした機会を実現するための仲立ちとなれるよう望んでおります。また、幸いなことに、日加両国のパートナーシップ拡大に関心が高まるであろう理由がまだ他にもあります。

2009年を通してカナダ大使館は、日本における最初の外交公館の開設80周年を記念するイベントを開催します。テーマは「ユースとイノベーション」すなわち「若者と斬新な創造性」です。若者を中心にするのは時宜にかなっていると思います。2008年、カナダは人気の「ワーキングホリデー・プログラム」の受け入れ枠を年間5千人から1万人へ増やしました。2009年には受け入れ枠を越える応募がある見通しです。

カナダは二国間関係の基本的な土台となる、人と人との絆の重要性をよく理解しています。そこで、両国間でこれまで続いてきた人の交流をさらに推進するために、次のような80周年記念プログラムを企画しています。

その他にも、若者を対象とした企画として、80校からの修学旅行を大使館で受け入れる館内公共施設ガイドツアーの実施、大使館職員による全国80 校への「カナダ出前授業」などを企画しています。これらの企画については今後詳細が決まり次第、カナダ大使館ウェブサイトに掲載する予定です。

2009年の80周年記念行事の中で特筆すべきは、天皇皇后両陛下のカナダ訪問です。カナダ大使館は双方の官民両部門と協力の上、この機会に、日本におけるカナダのイメージを新たにしたいと望んでいます。美しい自然と天然資源が豊かな国という従来のイメージにプラスして、優れた先端技術を持つ知識集約型の国家という側面も強調したいと思います。

2010年にカナダは、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーとウィスラーで、冬季オリンピックとパラリンピック、また、オンタリオ州ハンツビルでG8 サミットを主催します。同じ年に、日本はAPEC 首脳会議を主催します。ですから、2010年には両国首脳だけでなく、閣僚その他の高官による相互訪問もたくさん行われるでしょう。

こうした機会はすべて、日本におけるカナダ、そしてカナダにおける日本の理解を高める良い機会となるでしょう。言うまでもなく、究極的な目標は相互に恩恵をもたらすように協力できる方法を見出すことです。

最後に、長年にわたる多くの友人や新しい友人の方々から今後もご協力をいただきながら、日加関係の発展のために力を尽くしてまいりたいと思います。国際的な金融経済の危機にあって、私達はお互いに提供するものをたくさん持っております。多くの点で、カナダと日本の経済は無理なく互いに補い合うことができます。共通する価値観を持ち、広範囲の分野にわたり利益を共有する両国は当然ながら、21世紀に向けたパートナーと言えるでしょう。

ご清聴ありがとうございました。



2009-12-08 更新


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